油彩画の調査 代表的な調査方法 | |
通常光線下観察 | |
自然光の元で作品を観察.すべての調査に先立って,作品の外観を観察して状態を記録する. | |
拡大観察,顕微鏡観察 | |
ルーペ,実態顕微鏡で作品を拡大観察.10〜20倍程度の拡大でも観察できる症状は多い. | |
暗所で作品に一方向のみから光を当てて,作品表面の凹凸を強調して状態を観察. 支持体の変形,絵具の変形や浮き上がり,絵具のマチエール(筆触,タッチ),絵具の厚さなどが明確に観察できる.塗り重ねの様子から画家の描画手順が分かる場合もある. |
|
紫外線蛍光観察 | |
近紫外線を発するブラックライトや紫外線蛍光灯などを用いて暗室で作品表面の蛍光反応の様子を観察. ワニスが蛍光して塗布ムラを確認できたり,カビの発生箇所や過去の修復によって補彩(ほさい)された箇所が黒く見えたりなど,自然光線下では確認しにくい状態を観察できる場合がある. |
|
X線観察 | |
物質を透過する能力を持つX線を用いて作品内部の状態を観察. 表面の観察では見ることができない作品内部の構造,損傷箇所,修復跡の確認などが可能. 絵具の中でもX線を透過しにくい鉛白の使用箇所が確認できる. |
|
赤外線観察 | |
赤外線を用いて絵具層下層の状態を観察. 赤外線は薄い絵具ならやや内部まで入り,炭素によく吸収される性質があるため,木炭,墨,鉛筆などで描かれた下描きが観察できる場合がある. |
|
クロスセクション観察 | |
作品から試料を採取した場合,試料を樹脂に包埋して断面を拡大観察.100〜200倍程度で観察. 絵具の塗り重ねの様子(層構造),各層の色,厚さの実測,描画手順などが確認できる. |
|